事例紹介

「わからない」を「わかった」に変える 大規模修繕ワークショップ

居住者の方々のコンセンサスを取らないといい修繕には繋がらない

aAさま:ただ、懸念もひとつあるんです。今回のワークショップで修繕委員会のメンバーは知識が身についたと思うんですが、これからは居住者さんのコンセンサスを取っていかないといけませんよね。一般の居住者さんはこのワークショップに参加していないので、そうした方々の意識をどうやって上げていくべきかについては、まだ正解が見えていないんです。

近藤:確かに、今後は居住者の方々のコンセンサスを取ることが大規模修繕を進めていくにあたって非常に重要になってきます。修繕委員会の中だけで決めても、良い修繕には結びつきづらいですから。その中で大事なことは、居住者説明会です。居住者の方々が参加しやすいように、複数回実施するなどしてしっかりと周知していくことが必要です。

また、こまめにアンケートを実施して、居住者の方々の意見や要望をあぶり出すことも効果的です。そこで注意したいのは、アンケートの書式にはこだわった方がいいということ。やはり、一般の居住者の方々は、さほど大規模修繕に対する意識は高くないことが多いので、文字だらけのアンケートだと面倒だと思って回答してくれないことも多いんです。そのため、写真やイラストを入れたり、極力文字数を少なくするなど、アンケートを作る側の基準ではなく、アンケートに答える側の基準で作成した方がいいでしょうね。

わからないことをきちんと疑問に思うことの重要性

近藤:私自身、今回のワークショップは初めての試みだったこともあり、不足していたと感じる部分やもっとこうすべきだったと感じる部分はあります。

ですが、このような形で実際に修繕に関わる会社の話を聞くことで、修繕委員会の方々が、大規模修繕には何が大事なのかということに意識を向けてもらうことは重要なことだと感じました。このような形で知識と意識を高めてもらって、今後もより良いマンション運営を行っていただければいいなと思っています。

Nさま:そうですね。今回のワークショップを通して、その道筋はひとつ見えたと思います。近藤さんにはこれからの大規模修繕も、コンストラクション・マネージャー(※)という立場で関わっていただくことになりますので、引き続きいいお付き合いをさせてもらえればと思います。

Sさま:私たち修繕委員会は、技術的なことに関しては素人ですが、わからないことをきちんと疑問に思うことはとても大事だと思っています。マンションは私たちの資産ですから、管理会社の意見をすべて鵜呑みにするのではなく、「なぜ」「どうして」と考え、解決していくことが、資産価値を維持することにつなげられると思います。

今回あらためて、専門的な知識を持った第三者のアドバイスをもらうことはとても有意義なことだと感じました。今回、近藤さんがやってくれたことは、私たちだけではなく、どこのマンションでも望んでいることだと思います。これからもよろしくお願いします。

近藤:こちらこそ引き続きよろしくお願いします。

※コンストラクション・マネージャー(construction manager)マンションの大規模修繕など、工事・建設プロジェクトにおいて、品質や工程、コストなどを中立の立場で調整し、所期の目標に向かって円滑にプロジェクトを進める者。