適切なマンション維持管理のために、建物の部位ごとに「専有部」と「共用部」を定めておくことが、大規模修繕や設備更新工事を進めやすく、工事費用を負担するのが誰なのかが明確になります。
ここでは、専有部と共用部の違いをあらためて確認してみます。
マンションのなかでも、居住者が単独で使用している住戸内を「専有部」といいます。専有部は個人の管理になるため、内装のリフォームやシステムキッチン、バスなどの設備の取替などは、各区分所有者の費用でおこなうことになります。
ただし、増築や建物の主要構造部に影響が出るような工事の実施は不可で、外壁にスリーブを開けるなどの共用部の変更にもとれるリフォームや間取りの変更・床材変更にともなう漏水、工事にともなう騒音、振動、工事マナーなどの問題には、かなり気を使う必要があります。
そのため、専有部工事の承認制度を設けている管理組合も多くあり、平成25年マンション総合調査では、70.2%の管理組合が専有部分の修繕等について使用細則・協定を定めているという結果が出ています。
マンションの共用部は、専有部に比べてそれぞれのマンションの管理規約により共用部と定められる部分があり、やや複雑です。
居住者が共通で使用する廊下や階段、エレベーターなどを「法定共用部分」、集会室や管理事務所、屋内駐車場など単に共用部とするには問題になりやすい部分は管理規約で共用部と定めて「規約共用部分」とし、共用部ながら特定の区分所有者が単独で使用できるバルコニーやルーフテラス、1Fの専用庭などは「専用使用部分」とするケースが多いです。
共用部分の種類と部位 | |
法定共用部分 | 構造躯体、廊下、階段、エレベーター、住戸に関する設備機器・配線・配管など |
規約共用部分 | 管理室、集会室、管理用倉庫、屋内駐車場、トランクルームなど ※マンションごとの管理規約による |
専用使用部分 | バルコニー、ルーフテラス、専用庭、玄関扉、窓サッシ(枠・ガラス)など ※マンションごとの管理規約による |
但し、建物や設備のどの部位を共用部とするかは管理組合の判断によるところが大きくなります。例えば、浴室の床の防水層や床板の下の部分(スラブ)のさらに下に配置されている排水管類などは、漏水事故の対応がしやすいように共用部として管理することが望ましいとされています。また、玄関扉や窓サッシは、個人で取り替えると防災や美観の点で建物に悪影響をおよぼすこともあるため、共用部としてあつかうのが一般的です。
この機会に、それぞれのマンションの管理規約や細則を点検することをおすすめします。
とはいえ、「読み解くのが面倒」という場合が殆どですから、お気軽に当センターにお問い合わせください。膨大な資料のなかから、必要部分を抜粋してご説明します。