管理組合のハウツー

管理会社との委託契約

「業務委託方式」の採用が多数

分譲マンションの共用部の管理方式は、管理組合自らがおこなう「自主管理方式」と、管理会社に委託する「業務委託方式」があります。

国土交通省が、5年に1度のペースでおこなっている「マンション総合調査」によると、ほとんどの管理組合が「業務委託方式」を採用しています。多くの管理組合が管理会社に管理を委託している実態を背景に、平成13年に「マンション管理適正法」が施行され、管理会社の登録制度や業務に関する規制などが制定され、管理組合財産の保管や契約の締結に関する適正化が図られています。

平成20年 平成25年
管理組合がすべての管理事務を行っている(自主管理方式) 5% 6.3%
基幹事務を含め管理事務の全てをマンション管理業者に委託
(業務委託方式)
74.9% 72.9%

出典:平成20、25年度マンション総合調査

管理会社との契約手順

委託先候補のリサーチ

理事会や専門委員会で委託先候補会社をインターネット検索などで調査します。ちなみに管理会社は、国土交通大臣の登録を受ける必要がありますので、登録のチェックも併せておこないます。

管理会社の登録状況の検索サイト
http://etsuran.mlit.go.jp/TAKKEN/mansionInit.do
管理会社の行政処分歴の検索
http://www.mlit.go.jp/nega-inf/

委託料などの調査

管理会社からできれば3〜5社程度見積りをとります。まずは金額や項目・内訳を確認し、候補を絞り込んでいきます。理事会や組合員に対してのプレゼンテーションを依頼するのもいい方法です。

なお、管理会社の財務状況を確認したい場合は、過去3期分の貸借対照表などを、提出してもらうことも可能。

できるだけ多くの会社情報を集め、調査結果や見積り、プレゼンテーション時の印象などを総合的に判断して委託先を選定します。

重要事項の説明

説明会の日の1週間前までに、重要事項、説明会の日時・場所を記載した掲示や書面の配布・交付があります。

説明会では、管理業務主任者が管理業務主任者証を提示した上で説明をおこないます。

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総会の承認・契約の締結

重要事項説明を受けた管理会社との契約について、管理規約に基づき総会決議をおこないます。

契約成立の際、管理会社から契約内容を記載した書面が管理組合管理者あて(たいていの管理組合では理事長が兼任)に交付されます。
契約書面は両者が記名押印する「契約書」型が一般的です。

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業務の履行

契約に基づき、管理会社が管理業務を履行します。

なお、管理組合と管理会社の契約は1年ごとの更新制となっていて、自動更新は原則的に認められていません。管理組合は、次年度の更新契約に向けて、業務内容の検討や委託業者の履行状況の確認をしっかりおこなう必要があります。

また、管理会社が管理組合の管理費等を管理する場合は、管理会社の固有財産および他の管理組合の財産と分別して管理する必要があります。

管理の方法は、マンション管理適正化法に定められていますので、管理委託契約書または重要事項説明書などにより確認してみましょう。

分別管理の主な内容

・収納口座に保管された毎月の管理費等は、原則、翌月末日までに残額等を保管口座に移し換えなければなりません。
・管理会社が、管理組合名義の保管口座の印鑑等を保管することは禁止されていますので、管理組合が保管します。
・管理会社は、毎月収支状況報告書等を作成し、翌月末日までに管理組合に報告しなければなりません。
・管理会社は、収納口座に入金された管理費等について、原則1ヶ月分相当額以上の保証措置を講じなければなりません。

管理事務の報告

管理会社の管理業務主任者から、管理組合管理者に対し、会計の収入及び支出の状況などについて報告があります。

総会報告・承認

管理者が、収支決算の状況を報告し、総会決議をとります。

管理組合は次年度も同じ管理会社に管理業務をまかせる場合、契約終了日の3ヶ月前までに契約更新の意思を示します。

更新の意向を受けた管理会社は、管理委託契約を結ぶ前に重要事項説明書を交付し、説明会を開かなければなりません。

ただし、管理委託契約書の交付義務を怠った際には、管理会社に対して20万円の罰金が科せられますが、重要事項説明書の交付には法律的な罰則規定はありません。

契約更新時に管理会社が重要事項説明書をなかなか出してこない場合は、管理組合から強く請求する必要があります。

マンション管理の主体は管理会社でなく管理組合

管理会社に対する主な規制内容は、これまで紹介したとおりですが、「何を委託するか」「どのような契約条件とするか」について法令による規制はありません。

これは「業務委託契約は、契約自由の原則により、民法などの法令に抵触しない限り有効であり、その内容は管理組合と管理会社の両者の合意において決定されるべき」との考えによるものです。

委託した業務が円滑に履行されるには、管理組合と管理会社との双方が、契約内容やマンションの状況について共通な認識を持ち、対等な立場において良好な関係を築くことが不可欠。管理組合はマンション管理の主体は管理組合であることを再認識し、すべてを管理会社まかせにすることなく、組合員全員で協力し、管理組合運営の活性化に努めていくべきです。