事例紹介

実績ドキュメンタリー(sハイツ)

足並みのそろわない管理組合。実施するか、先送りか―

目視調査の結果をレポートにまとめた担当Kは、自主的に理事会メンバーに向けた報告会を開催しました。躯体に何十箇所も爆裂がおこっていること、ひび割れの深度、漏水の進行状況、タイルの強度・・。どこをとっても異常がある状態で「素人目に見ても劣化していることはわかっていましたが、そのままにしておくと生活にどのような影響が出るのかが理解でき、一刻も早く手を打たなくては、と思いました」(T理事長)

建物の劣化が深刻なことを改めて悟った理事会メンバーは、担当Kに区分所有者向けの説明会を開催してほしいと依頼。そうして理事会向け報告会のあと、区分所有者が集まりやすい時間帯を選び、今度は区分所有者に向けての劣化調査説明会が開催されたのです。説明会当日。集会室がいっぱいになるほどの区分所有者が集まりました。こういった説明会では3割程度集まればいいほうですが、Sハイツはなんと6割超の参加率。排水管が壊れたことで大きな損出があったこともあり、修繕に対する関心の強さが現れていました。

ですが、レポートをもとに建物の劣化状況を説明していくと、しだいに会場がざわめきはじめました。担当Kは、そのときの様子について「投資物件として運用している区分所有者と、居住している区分所有者とでは、考え方に大きな差があり、それが軋轢を生んでいたようです。このままでは、総会で承認を得て工事に踏み切ることすら難しいのではないかと思うくらいでした」と話しています。

大規模修繕工事の実施において、もっとも難しいのは合意形成。区分所有者の意見がまとまらず工事がどんどん先送りになり、建物がみるみる劣化していく事例はいくつもあります。少しでも早い着工が望まれるSハイツにおいて、これ以上の足踏みは危険。スラム化が現実のものになってしまう―そんな不安が担当Kの脳裏をよぎったとき、居住している区分所有者から声がかかりました。「いつもこうやって分裂してしまうんですけど、建物をなんとかしたいと思う気持ちはみんな一緒なんです。どうか、無事に工事ができるように引っ張っていってもらえないでしょうか?」。