多くの管理組合の悩みのひとつに「役員のなり手不足」というものがあります。なり手不足は、マンションの賃貸化の進行や無関心層の増加など、いくつか原因がありますが、なり手不足が状態化すると、それに伴って「役員人事の固定化」も進んでしまいます。特定の人ばかりが役員になっていると、その人たちばかりに負担がかかって不公平感が生じ、管理組合の運営に支障をきたすことになりかねません。
これらの対策のひとつが「役員報酬制度」の導入です。マンション標準管理規約の第37条には「役員は、別に定めるところにより、役員としての活動に応ずる必要経費の支払いと報酬を受けることができる」と書かれていますので、役員のなり手不足と役員人事の固定化を解消するために、報酬制度の導入を検討してもよいでしょう。
ただし、役員報酬制度を導入することは「報酬制度導入による費用の増額」を行わなくてはなりません。報酬はたいていの場合管理費の中から支払われることになりますので、各区分所有者が支払う費用を増額し、財源を確保する必要があるのです。また、導入に伴い報酬支給に関する細則の作成も必要になります。さらに、以下のようなデメリットも生じる可能性があります。
上記のように、役員に報酬を支払うためには費用を増額して財源を確保する必要があります。金銭的な負担が増えることを歓迎する組合員はいないでしょうから、理解を得るのはハードルが高いことだと言えます。
報酬が発生するということは、それだけ責任感が増すことになります。そのため、逆に役員に就任することを忌避する人が出てくる可能性があります。
「報酬をもらっているのなら、役員に仕事を任せてもいい」とみなされ、報酬を支払う側である一般組合員の無関心が加速してしまう恐れがあります。
これらのデメリットを軽減するために、慎重に準備をしてから報酬制度を導入するようにしましょう。
では、具体的にどのような手順を踏んで役員報酬制度を導入していくかをご紹介していきます。
まずは理事会で報酬制度導入の必要性を整理・検討します。
その上で具体的な支給額、支給方法、ルールの整備(主に、報酬と必要経費の範囲の明確化など)、予算案の検討・作成を行います。
理事会での検討結果を組合員に伝える場を持ちます。そこでなぜ報酬制度の導入が必要か、導入することによって生じるメリットとデメリットなどを説明し、理解と協力を得られるようにしましょう。
これは、総会の前に実施する方がスムーズです。
(2)の結果を持って、総会で決議を行います。
以上が報酬制度導入の手順となります。後々問題にならないために、しっかりと議論を尽くして進めていきましょう。